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■エッセイ6…長崎新聞2003年9月7日付「うず潮」掲載
                   
                             



「名月に月琴の調べ」 ヤマサキユズル

月の美術館で月琴の演奏を聴きたいという夢があります。幕末の頃中国から長崎に伝わり、あの坂本龍馬の妻おりょうさんも好きで弾いていたという月琴です。明清楽が盛んな頃には月琴の大ブームもあったようです。名月の夜に月の美術館で月琴を聴く…実に贅沢な夢だと思っています。

今年の中秋の名月は九月十一日(旧暦八月十五夜)です。さらにもう一回名月がやって来ます。十月八日(旧暦九月十三夜)の月見は中秋の名月の一ヵ月後なので「後の月見」と呼ばれています。地域によっては十五夜と十三夜とどちらもお月見をしないと良くないとか、関東の方では同じ庭からお月見をしないと「片見月」とか「片月見」といって嫌われるそうです。また中秋の名月は芋が収穫される時期なので芋名月と呼ばれ、十三夜の月は豆や栗の収穫時期なので豆名月や栗名月とも呼ばれています。

中秋の名月は中国から伝わったもののようですが、十三夜の月見は日本独自の風習だそうです。こういった風習は自然を大切にする意味から、あるいは人と自然のかかわりを考える意味からも大切に伝えていきたいものです。

月の美術館でも中秋の名月の時は「名月のお茶会」、十月八日には「豆名月のお茶会」を企画しています。ただ十月八日といえば長崎ではおくんちの中日なので十三夜はかすんでしまいそうですが…。

ともあれ月琴への夢は日ごとに大きく膨らんでいます。横須賀市にある「よこすか龍馬会」が行う「おりょう慰霊祭」の折にはおりょうさんの写真の横には愛用の月琴が飾られ、月琴の奉納演奏が行われるそうです。遠い昔、ここ唐人屋敷や丸山の料亭でも月琴が演奏されていたことでしょう。現在長崎には明清楽保存会があり折々の催しでは演奏されているらしいのですが残念ながらまだ耳にする機会はありません。おりょうの弾く月琴の音色に耳を傾ける龍馬の姿に思いをはせ、丸い月琴の調べが月の美術館に流れる日を夢みています。(「月の美術館」館長)

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