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■エッセイ4…長崎新聞2003年7月17日付「うず潮」掲載 
                             


「月夜に乾杯!」 ヤマサキユズル

2001年の夏、ベルギーで開催した海外初の個展のときです。夜も9時を過ぎてやっと遅い夕暮れになります。やがて月が出て、まるでルネ・マグリットやポール・デルヴォーの絵と同じ空気に包まれてしまいました。その時、どんなに想像や空想の世界を表現していても芸術家の生きている土地や空気から作品が生まれることを実感し、長崎で生きているボクの作品には意識しないでも長崎の夜の空気が塗り込められていると信じられるようになりました。

 月の美術館には絵に興味がある人や月が大好きな人が来られます。このことは月の美術館のホームページの日誌にも書いたことがありますが、梅雨のはじめ頃に月が大好きなご婦人が来られました。「月が好きな人にお天気なんか関係ありません」と言われながら月との体験のお話しをされました。山に登りすっかり暗くなる頃に満月に近い明るい月の光に包まれて山道を下ったこと、そして家に帰ると窓から差し込む月光に感動して暫し佇んだこと、その時全身に月の持つ不思議な力が宿ったような気持ちになったそうです。この出来事が原点になって月の写真を撮ったり、月をテーマにして焼き物までされるようになったそうです。月の持つ不思議な力を感じるお話しでした。

 潮の干満は月の力で起こります。体の70パーセント以上が水分の人間が影響を受けないはずがありません。産院のデータだと人が生まれるときは満月の一日前と三日後がピークだそうです。また満潮の時に生まれることが多く、人が亡くなるときは潮が引くときと言われています。やっぱり不思議な力を感じざるを得ません。

 最近の観測結果で月は1年間に3cm地球から遠ざかっているそうですから、10万年後には潮の満ち引きのない静かな海になってしまいます。波のない海や月夜のない地球なんて実に寂しい風景だと思いませんか?煌々と輝く月を眺めるたびに今の時代の地球に生まれて良かったなと感じています。(「月の美術館」館長)

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