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■エッセイ3…長崎新聞2003年6月20日付「うず潮」掲載 
                             



「月のカレンダー」 ヤマサキユズル

先日、月の美術館に来られたお客様から「私の母が長崎に原爆の落ちた日は満月やった、と言うのですがそれが本当なのかわかりますか?」という質問を受けました。インターネットで調べればすぐ分かりますよとお答えして、次回の来館までの宿題になりました。

私自身も被爆二世なので興味を持ち、さっそく調べてみると1945年8月8日が新月でした。つまり8月9日の夜は晴れていたとしても月は出ていないのです。想像するにその方のお母様の記憶の中の満月は原爆で真っ暗になった空に浮かぶ太陽だったのではないかと思われます。

現在月の美術館には2種類の月のカレンダーがあります。二つとも美術館にと頂いたものです。また来館の記念にオリジナルでその月々の「月齢カレンダー」を差し上げています。旧暦・陰暦とも呼ばれる月のカレンダーはその名の通り月の満ち欠けを元にしています。月の暦では毎月1日は新月から始まります。

古代ローマではラテン語で新月(三日月)を意味するカレオということばを触れ回ったことから毎月1日をカレンドと呼ぶようになったそうです。それがカレンダーの語源になっています。つまり古代ローマ時代から月と人間は密接な関係だったことが伺えます。

人間と自然の関係が密接だった証拠が月のカレンダーだと思います。いまでも釣りや農作業には月の暦は欠かせないもののようです。

現代はあまりの時代の早さに人間がついていけなくなってしまっているようです。月の満ち欠けなど自然と同じリズムでゆっくり生きたいと願っている人が増えています。それは月のカレンダーが静かなブームになっていることと無関係ではないと思っています。

人間が自然に生かされ自然とともにある…月のカレンダーを見ているとそんな時代が蘇って来るようです。いま時代は燃えるような太陽の時代から、ゆったりと心の中を見つめるような月の時代へと流れ始めているのかもしれません。(「月の美術館」館長)

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