■エッセイ18…長崎新聞2004年9月4日付「うず潮」掲載

| 「歴史の舞台長崎の月」 ヤマサキユズル 月の美術館に一番近い電停はつきまち(築町)で、次の電停が出島。我が国に初めてピアノがもたらされ演奏された出島で小さくて素朴な音色のフォルテピアノの演奏を聴く機会に恵まれました。最後はシーボルトと同時代の作曲家ベートーベンの「月光」が演奏され幸せなひとときでした。出島は当初「つきしま(築島)」と呼ばれていました。会場を出て見上げると十二夜の月が煌々と輝き、まさに歴史の舞台にいることを実感した夜でした。 長崎の月を詠った歴史上の俳人歌人がいます。一人は芭蕉の弟子で長崎出身の向井去来、「尊とさを京でかたるも諏訪の月 去来」京にいて故郷お諏訪さんの月を偲んでいるのでしょう。もう一人は「長崎の山のはいづる月のよさ、こんげん月はえっとなかばい」と歌った太田蜀山人です。上の句はいくつかの説があり、僕は長崎の部分を彦山と置き換えて覚えています。いずれの歌も長崎の景色の中に輝く月がイメージされて素敵です。 1865年グラバーにより我が国で初めて本物の蒸気機関車が走り、我が国最初の気球飛揚の地もある市民病院から松ヶ枝にかけての海沿いに、今年になって素晴らしい公園が完成しました。月の美術館から湊公園を抜け15分ほどの散歩です。港を吹き抜ける潮風とゆったりとした時間と広い空間が心地よく、憩いの場所になっています。その一角、月の舞台と名づけられたスペースから広がる芝生の中に月の満ち欠けのプレートがあります。新月から満月そしてまた新月へと続いていて、夜になるとはめ込まれた太陽電池で小さな照明がさりげなく点滅して夢心地になります。なかなか素敵なアイデアですね。 今年の中秋の名月は9月28日です。中秋の名月は満月ではないことが多いのですが、今年はちょうど十五夜満月です。水辺の森公園から眺める名月もまた格別でしょう。月の美術館ではお天気に関係なく今年も「名月のお茶会」を予定しています。 (「月の美術館」館長、長崎市) |