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あなたのお話 by 夜桜


先生の絵は、つきばっかりだ。
つき、つき、つきつき。
ネットでも、見る。
感想を、なんて言われるけど、無理だよ。
だって、つきなんだもの。

「私は先生に、『ああ、この絵では、つきが右なんですね。あ、こっちは左だ』と言
いたいのです」
私の正直な言葉に、旅人は、笑った。
「だって、どの絵を見ても、同じなのです。だから、困っています」
「それなら、それを言うのがいいでしょう。新鮮ですよ」
旅人がそう答えたので、私は先生を捕まえることにした。
せめて、生きた言葉で言わなければ。
先生は、いつも私の一歩先を行く。
だから、予定の次の次を実行してみることにした。
次の次の予定は、コーヒーの香りをかぐこと。
案の定、いつものテーブルに先生はいた。コーヒーの香りをかいでいる。
私が席につくと、「次の次を実行したのですね」と先生は笑った。
私は、コーヒーの香りをかいだ。落ち着いた気分になったあと、頭がくらくらする。
そのまま、切り出した。
「私は先生に、『ああ、この絵では、つきが右なんですね。あ、こっちは左だ』と言
いたいのです」
私の正直な言葉に、先生は、笑った。
「では今度、絵を二枚描きましょう。右のつきと、左のつきの絵です。
その時は、きちんと今のように言うのですよ」
先生はその約束を、コーヒーと一緒に飲み込んだ。
私は、香りと一緒に吸い込んだ。

「私は、その時が楽しみなのです」

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